イベント報告
第1回wiggle信州聖高原グランフォンド
1st wiggle Shinsyu Hijirikogen Granfondo
2013年8月25日
■KFC徒然

昨年8月末、KFCメンバーで鍛鉄工芸家の西田さんとの 何気ない雑談の中で、西田さんが信州の聖高原と云う所に別荘地を持っており、 それを放って置くのは勿体ないと云う話になりました。その敷地は2区画あり、バブルの頃(20数年前)に鍛鉄工房を建てようとして 購入した土地だそうです。

その後、埼玉県秩父市に工房を建てたので、その土地はそのままになっていたということです。

そして、「もう、あそこは使わないから大西さんにあげるよ。」とさらっと言う。何と気前のいいおっさんなんでしょう!! カネカネカネの世知辛い今の世の中、あり得ない話です。

確かに放って置くのは勿体ないという話になり、そこにログハウスでも建て、夏場、KFCの皆が利用できるような活動拠点にできないか、 と云うことになりました。

【初めての麻績村】

KFCの取柄は即断即決とその後の行動力にあります。その2日後、9月2日に西田さんと原さんと大西の3人で聖高原にある現場を 見に行きました。

聖高原と云うのは長野県麻績(おみ)村にあります。 位置的には松本市と長野市の中間に位置し、高速長野自動車の麻績ICから 10分ほどの所にあり、アクセスに関しては申し分ありません。過去、美ヶ原や蓼科という信州の有名所は幾度か訪れていますが、 麻績村というのは、聞くのも初めて、訪れるのも初めてです。

車から降りると、「涼しい!」と思わず声が出てしまう。湿気がなく、爽やかで、気持ちがいい。さすが標高1000mの高原です。 青梅から2時間半ほど車を走らせただけで、こんなにも涼しい場所へ来れるのかと驚きでした。

先ず、西田さんの別荘地をチェックした後、近くをドライブし、標高1000mにある聖湖にも立ち寄りました。湖面に波のない不思議な 雰囲気の湖です。湖畔にある聖レイクサイド館で湖を眺めながら昼食を食べました。 レジ横にある干しブドウとリンゴジュースはお勧めです。

【自転車乗りに魅力の聖高原】

ほとんど車が走っていない長閑な道路脇には少し赤く色づいたリンゴ畑が転々とありました。また、白い花を付けたソバ畑、 それに赤白ピンクの花を付けたコスモスも爽やかな感じで咲いていました。棚田もあちこちに点在しています。 遠くに北アルプも望むことができます。

全く観光地化されておらず、信州の素朴さが残っている素晴らしい所です。交通量は少なく、信号もありません。夏場、 自転車でツーリングしたら気持ち最高そうな場所です。

数日後には西田さんと2人で自転車を持ち込んでツーリングを楽しみました。暫し下界の猛暑を忘れ、気分は最高です。 この心地よさを 下界のサイクリストにも体験させてやりたいと思いました。

この思いが高じ、標高が800m〜1000mある聖高原をツーリングする グランフォンド大会を立ち上げようと思い立った次第です。

とは言っても、避暑地にありがちな柔いものではなく、グランフォンドの名に恥じないよう距離110q、獲得標高2600mという 国内屈指のタフなグランフォンドです。しかし、売りは避暑地「聖高原の爽やかな空気」です。

距離が110qと長いので麻績村、長野市、千曲市、坂井村、上田市、坂城町、坂北村の7市町村を通過します。そして、安曇野警察、 長野南警察、千曲警察、上田警察の4つの警察管内を通過します。いかにグランフォンド云えども、当然、警察の道路使用許可は 必要となります。

【いよいよ第1回大会開催】

1年後の夏、すなわち今年の8月25日(日)に「第1回wiggle信州聖高原グランフォンド大会」を開催しました。

大会運営のベースとなるオフィシャルホテルは居心地の良い 「シャーンガルデンおみ」(標高800m)にお願いしました。

24日(土)、前泊のため「シェーンガルデンおみ」に到着された 参加者の皆さんは口々に「涼しい!気持ちいい!」を連発されていました。おそらく下界は35〜36度あるでしょう。

因みに、この時期の聖高原は朝晩の気温は20度くらいです。日向の陽射しはきついですが、日陰は涼しくて、湿気がなく、 空気が爽やかです。1日滞在すれば、夏バテは解消します。おカネには代えがたい本当の贅沢と云うものです。

大会前日は晴天で、「シェーンガルデンおみ」は高原の爽やかな空気に包まれていました。この天候なら明日は最高の自転車日和になると 考えていました。

【濃い霧、小雨・・最悪の朝】

しかし、世の中そんなには甘くありませんでした・・。当日、聖高原には早朝からガスがかかり、小さな雨が降ったり止んだり・・・、 せっかく長い時間をかけて準備してきたのに・・ スタッフは皆がっかり。下がりがちなテンションを 押さえ、淡々と準備を進めていきました。

屋外スポーツの宿命で、天候だけはどうすることもできません。

それでも、コースチェック担当のスタッフたちは、スケジュールに従って、早朝5時から2手に分かれ、第1ステージ(50q)と 第2ステージ(60q)を車でチェックに入りました。前日夕方にセットした矢印標識が動いていないか、コース上に障害物が 落ちていないか等々の最終チェックです。

また、その他のスタッフは、6時から聖湖畔の大会会場に集まり、付近の道路上にイベント開催中を周知するための標識をセットしたり、 当日受付の準備をしたりしました。その間、時には濃い霧で聖湖が見えなくなる時もありました。

【聖湖に恐竜現る!】

大会に向け聖湖畔に設置した恐竜たち。普段は優しい雰囲気なんですが、この時ばかりは雨で黒光りし、背後の霧と相まって、 かなりリアルに見えました。恐竜の設置は1年前に聖湖を見た瞬間、聖湖には恐竜が良く似合うと思ったからです。

これら3体の恐竜は、大会の1週間前に製作者の西田さんが浜松市で開催中の恐竜展から引き揚げ、運んで来たものです。そして、 現場で待機していた我々(原・市川・斎藤・大西)と麻績村観光課の皆さんとで会場となる聖湖畔にセットしたものです。

そして、その翌々日に西田さんはウクライナで開催される鍛鉄工芸家のイベントに日本代表として招待され、出かけてしまいました。 土地勘のある貴重な運営スタッフが一人抜けることになりました。因みに、恐竜たちは大会終了後に麻績保育園に移され、可愛い園児たちに 遊んでもらっています。

【小雨の中、受付始まる】

午前7時頃から参加者が集まり始めました。中には、この天気で出走を躊躇される参加者もいました。しかし、ほとんどの参加者は 受付を済まされました。自転車乗りは肉体だけでなく、精神的にも逞しいものです。

また、同時刻、お馴染みの紺色の制服に身を包んだガードマン十数名の一団が会場に到着しました。これらのガードマンの皆さんは コース上の道なり以外の全ての分岐点で皆さんの安全と誘導を担当します。

7時半頃には麻績村高野村長も会場にお見えになりました。村長からは麻績村産の美味しいお米「おみごと米」5s袋を アタックゾーンの好タイムを叩き出した15名にプレゼントして下さいました。この米は昔ながらの自然乾燥という手法で丁寧に 生産されているものだそうです。

アタックゾーンとは、疲労のピークにある第2ステージ後半の約87q地点から約90q地点までの約3q上り坂区間を 頑張ってもらうためのものです。疲れた体のにカツを入れる為、且つ、ツーリングにアクセントをつける為、急きょ、 設定したものです。

8時頃、前日に「シェーンガルデンおみ」で受付を済ました参加者の一団が開会式に間に合うように集まってきました。

【スタート、その直後、青空広がる】

8時10分、聖湖畔にはガスがかかり、肌寒い中、麻績村高野村長による開会式のスピーチが始まりました。その後、高野村長の号砲で、 霧雨の中、 8時半のオンタイムに30人ずつの一団で、2分間隔でスタートして行きました。

ラッキーなことに、30分ほど経過して、9時頃になると雲の切れ間から青空が覗くようになってきました。その後、間もなく、 青空に覆われ、爽やかな真夏の高原気候が回復しました。これを受け、スタッフ全員の肩に重くのしかかっていたものが取れ、会場の雰囲気が 見る見る明るくなりました。

基本的な運営方法としては、参加者の一団の前方に先導車、後方に回収車2台、それに応急キットとAEDを持った看護士がバイクで 参加者の一団に交じって走るというフォーメーションを採用しました。

本コースは第1ステージに約10qの上り坂が1本あります。第2ステージには約10q2本と約3qと約5qの計4本のタフな上り坂があります。 当然、それに対する下り坂もあります。参加者は上りに意識が行きがちですが、運営サイドは下りに神経を集中させています。

グランフォンドは「下りは臆病に、上りは勇気をもって。」が鉄則です。

本大会の距離は110qとそれほど長くありませんが、負荷の度合いでは国内屈指のキツさを誇っています。本場イタリアの グランフォンドにもキツさでは引けを取っていません。制限時間内に完走できれば、本場イタリアのグランフォンドでも完走できます。

因みに、本場イタリアのグランフォンドのほとんどが距離150q前後に設定されています。それは日照時間が 日本と比べて4時間(夏季の日没は22時頃)ほど 長いため設定可能な距離で、日本の環境では午後6時終了の100q前後が限度と考えています。夜の山中は危険ですから。 これは2011年夏にイタリアへツーリングに行った時に実感したものです。

【予想通りの展開】

ツーリング中の参加者の一団をカバーしているスタッフによると、 トップがエイドの「カフェテラスモモ」(23q地点)に到着した頃、 ラストが「シェーンガルデンおみ」(10q地点)通過という展開でした。この時点で上空には青空が広がっているとの連絡が入りました

これで皆さんの期待を裏切ることなく、コースから北アルプスを望むことができ、爽やかな避暑地のグランフォンドを堪能してもらうことが できるというものです。エイドではモモ自家製の天然酵母パン、ハーブティ、スイカ、トマトなどの夏野菜が並べられていました。

その頃、聖湖畔の会場では、麻績村観光課の皆さんが野菜スタンドの設置に取り掛かられていました。氷で冷やしたトマトやキュウリ、 それに甘いスイカです。皆さんが第1ステージをやっつけて会場へ戻って来られた時に食べてもらうためのものです。

そして、「聖レイクサイド館」にお願いしていた昼食の弁当も出来上がりました。お迎えの準備完了です。

正午前に第1ステージを終えた参加者が続々と戻ってきました。そして、弁当を食べた後、約2割の選手が第2ステージのキャンセルを 申し出ました。おそらく第1ステージ最終の坂、約40q地点から延々と続く10qの上り坂で脚を使い果たしたのでしょう。

【後半の第2ステージへ】

第2ステージへ突入された方は皆さん健脚揃いでした。きっとホームページからコース情報を収集されて、脚に自信のある方が 申し込まれたのだと思います。

途中で1割の参加者が追上車に収容されましたが、それ以外の方は関門である80q地点を「午後3時通過」 という条件を見事にクリアされました。すなわち、予想に反し、関門不通過の選手はゼロでした。

そして、制限時間の午後5時前には全選手がフィニッシュされました。お見事でした。お疲れ様でした。

因みに、 最初のフィニッシャー園田奨選手(東京都)はダントツで、午後1時半頃に戻って来られました。我々の試走からして想定外に速いタイム でした。 2位3位は、それから30分ほど遅れてのフィニッシュでした。 その他の大部分の参加者は、さらにその2時間ほど後でした。また、最高齢78歳の鳴嶋英雄選手(東京都)も10番以内に 余裕で戻って来られました。

【走り終えて】

走り終えた後、参加者の皆さん、足元をふらふらさせながらも、満足気な様子で、大会本部へ完走証を受け取りに来られました。 「来年も参加するよ。」と言い残して帰って行かれる参加者もいらっしゃいました。やって良かったと思う瞬間です。

因みに、麻績村と云う場所柄、参加者の出身地は東北、北陸、関東、東海、近畿、四国など広範囲に及んでいました。

また、麻績村には、このような全国区のスポーツイベントは初めてということで、高野村長始め、観光課の皆さんにも大変喜んで 頂くことができました。そして、我々も楽しく大会運営をすることができました。

それでは皆さん、来年の夏は聖高原へ贅沢な時間を過ごしにお越し下さい。

【レポート・フォト】
【Special Thanks】

麻績村、安曇野警察、長野南警察、千曲警察、上田警察、シェーンガルデンおみ、聖レイクサイド館、カフェテラスモモ、 Wachiレーシングチーム、wiggle

写真:小野口健太、池田将、舘岡正俊