イベント報告
第21回ロタブルー・トライアスロン
2014年11月15日(土)
21st Rota Blue Triathlon
■KFC徒然

南の島でのトライスロン大会は朝が早い。

スタート時間の06:30に向け、 早朝の暗い内から大会会場であるイースト・ハーバーで 準備を始める。見上げると、今年も満天の星空だ。流れ星を一つ見た。一瞬の出来事なので、願い事を唱えるなんて、とても無理な話だ。

6時頃には明るくなってくる。すでに、沖にはレスキュー部隊のボートがスタンバっている。港には救急車も待機している。

ロタ大会は ダイナミックな 外洋を泳ぐので、しっかりとしたレスキュー体制が必須だ。前日の試泳時に自由遊泳を禁止しているのも、そのためだ。 外洋では人間の泳力など微々たるものだ。

ロタ警察のゾリアック(高速艇)とジェットスキー、ルビンブルーパームスの ダイビングショップのボートが2艇、 マーク・マイケル率いる6艇のシーカヤックチームという万全の布陣だ。チームワークも完璧だ。

【昨年の20回大会でおしまい?】

島民の多くは、昨年の第20回大会でトライアスロン大会がおしまいになるのでは、と心配していたと言う。

ロタへのアクセス事情が 年々悪くなる中、我々KFCが薄氷を踏む思いで、何とかやり繰りしながら運営していることを、島民たちは知っているからだ。

昨年、ロタ〜グアム間のバイク搬送費用の不足分として、帰国直後に我々が追加料金100万円を近ツリ経由でユナイテッド航空に支払い、 大きなダメージを受けたことも知っている。さらに、参加者も高額なツアー代金(バイク運送費を含む)を支払って参加してくれることも 知っている。それ故、継続は難しいと思ったそうだ。

そんな状況下にも拘らず、今年も開催したので、島民たちはたいへん歓迎し、喜んでくれた。それ故、“welcome”をしなければ、 と思ったそうだ。 島民一人ひとりが自分のできる範囲で、大会運営を支えてくれた。

例えば、ダイバー達は数日前からイースト・ハーバー に潜って沈んでいる缶などのゴミ拾いをしてくれたり、海に入るスロープの滑り易い苔取りをやってくれたりした。

【最悪のタイミングでは?】

今年の開催日は最悪のタイミングとなった。我々はメイヤー(市長)の指揮命令系統を使って運営をやっている。ところが、1週間前の選挙で現メイヤーのメルチオが敗けたのだ。

通常、 この島では敗れて求心力のなくなったメイヤーの言うことは誰も聞かないのが一般的だ。それでも、例年と違わず、エイドには多くの 島民が出て、選手のサポートをやってくれた。もちろん、ロタ名物エイドのBBQも健在だった。また、アワードパーティの料理も例年と 見劣りしなかった。

改めて、トライアスロンだけは、政権に関係なく、島民皆が支えてくれていることを実感できて、嬉しかった。また、島の大切な イベントとして確実に島民たちの心に根付いていることを実感した。きっと、これほど地元の人に大切にされている大会は 世界中さがしてもロタ島しかないと思う。

【21回目の号砲】

06:30、ロタ・メイヤー(市長)メルチオの号砲で21回目のレースが始まった。全選手、一斉にイースト・ハーバーから沖に浮かぶ 巨大なブイに向かって泳ぎ出した。

27分後、51.5部門の白戸太郎選手がトップでスイムアップし、後続の選手がそれに続く。応援で会場が 騒がしくなってきた。そして、 スイムを終えた選手たちが続々とバイクコースへと出て行った。

制限時間90分ぎりぎりで70.3部門の最後のスイマーがイーストハーバーへ戻ってきた。そのスイマーをレスキューに当たった全ての カヤック、 ボート、ジェットスキーなど10艇ほどが取り囲んでいる。その様は、まるで追い込み漁と云った風景で、微笑ましい風景だ。

【神秘的なジャングル・ラン】

その後、しばらくして、51.5部門のバイクトップが戻って来た。そして、ランへと出て行った。

バイクコースも海沿いのコースあり、 ヒルクライムありで中身は濃いが、今年の圧巻は、何と云っても、濃い緑の神秘的なジャングル・ランだ。 樹木のトンネルや木陰が 何か所もできており、強い陽射しを遮ってくれる。

過去15年間ほど大きな台風が襲来していないので、ジャングルの樹木は伸び放題の状態だ。また、樹木の間から見えるロタブルーの海は 絶景だ。

因みに、この島では、大きな台風が来ると家屋や車だけでなく、ヤシやバナナ等々、全ての樹木を吹き飛ばしてしまう。そして 島がスカスカになってしまうのだ。

【21回目、無事終了】

午後3時頃、最後の選手がフィニッシュに戻って来た。安堵感で緊張が解ける瞬間だ。

脱水症やけが人を出すこともなく、 今年も無事に大会を終えることができた。

透明度の高いロタブルーの海も、 バイクコースのコンディションも、神秘的なジャングル・ランの趣も、島民たちのホスピタリティも、 最後のアワード・パーティのご馳走も、 全て我々のイメージ通りだった。

皆さんから頂いた高額の参加費や観光局からの援助も大きいが、 人口減少の中、物資や食料不足にも拘らず、島民たちはよくやってくれた。きっと、参加者の皆さんにも満足して頂けただろうと思う。

【計測システム導入と空撮】

タイム計測は今年初めて足首に計測タグを装着する感応式を導入した。

ロタ島では初めてとなる自動計測システムと 云うことで、 島民たちは、アンテナや計測機器に興味津津だった。この部分は、国内大会で毎度お世話になっている(株)ネオシステムに担ってもらった。

また同時に、ネオシステムがドローン(小型ヘリ)を持ち込んで空撮を予定していた。しかし、不幸にも直前の大会で墜落し、来年に 持ち越となった。透明度の高いロタブルーの中を泳ぐ選手達をドローンで空撮すると、どのように映るのだろうか、と考えるだけでも 楽しみだ。

ロタの海は透明度の高さで有名だ。特に今年は稀にみる透明度の高さだった。大会を始め頃(20年前)の極上のロタブルーに似ていた。 おそらく 太陽光の強さや雨、それにプランクトンの発生状況等々の微妙な変化で透明度も多少変化するのだろう。

【あるデビュー戦】

アイランド・シリーズをトライアスロン・デビュー戦に選ばれる人は多い。その中でも、ロタはその数が最も多い。

今年、 ロタでデビューされた選手のひとり、中屋選手(63歳)は、昨年8月の「wiggle信州聖高原グランフォンド」の50km部門に参加された。 大会と云うモノに参加されたのは、これが初めてだったそうだ。これを手始めに、今年7月の「葉山オープン・ウォーター・スイム」の 1.5km部門、 10月の「wiggle東京グランフォンド(120km)」を完走された。そして、最終目標とされてきたロタ大会に参加されたという 次第だ。

葉山の海とロタの海とでは、そのダイナミックさが全然違う。前日の試泳で、行きは恐怖心から平泳ぎが多かったが、帰りはクロールで 戻って 来られた。1時間ほどで、大きな進歩だ。最初は怖くて顔を浸けることができなかったと言う。スイムが苦手な初心者の多くは 皆そうだ。

しかし、翌朝の本番ではスタートからクロールで泳がれ、立派に完泳され、ガッツポーズでスイムアップされた。会場の皆が拍手喝采、 まるで背後からロッキーのテーマが聞こえてきそうだった。苦手なスイムをやっつけた。自分自身の壁を破った瞬間だ。

【身の丈に合った規模で】

近年、ロタへのアクセスは悪い。それに起因するツアー代金(バイク搬送料を含む)の高さが頭痛の種となっている。

視点を変えた 斬新なアイデアで、これらの問題を少しでも軽減させたいと思い、ツアーを作るに当たって、従来の近ツリだけでなく、旅行業界の巨人JTBにも、 その見積もりを依頼した。今後も、このまま近ツリばかりに依頼していたのでは問題の解決は不可能と感じたからだ。

しかし、結局、期日までにJTBは見積もりすら出すことができなかった。理由は、自転車の搬送方法も然ることながら、 ユナウテッド航空からチャーター便費用の提示がなかったからだ。JTBなら何か策があるのではないかと期待したが、ダメだった。 JTBにとっては、これまで米粒ほどのロタ島など眼中になかったのだろう。

それに反し、近ツリは実績もロタ島情報の蓄積もあり、ユナイテッドからチャーター便費用の金額提示もされており、期日までに パンフレットを 作ってきた。だから近ツリにした。当然の判断だ。

因みに、長年付き合っている近ツリの社員は優秀だ。 特に、近ツリの現地子会社(PDI)のスタッフは本当に優秀だ。

しかし、残念ながら料金面で満足いくものではなかった。だから、心苦しくて、これまでのように積極的な 募集活動をする気にはなれなかった。当然、参加人数は減った。

チャーター便の利点は成田からロタ直行であること、大勢(約150人)が一度に行けることの2点だ。しかし、昨年からは、 半端なグアム〜ロタ間だ。 おそらく日本〜グアム間の自転車搬送の手段がないのだろう。

何故なら、ユナイテッドの チャーター便(160人乗り)には自転車が僅か40台ほどしか乗せられないという致命的な弱点がある。

また、今年は自転車搬送費往復(600ドル)の高さから参加者が100人を切った。だから、もうコストのかかるチャーター便を 仕立てる意味はない。 それに参加者の皆さんに対し心苦しくて、運営していても、かつてのように我々自身が楽しくない。

来年からは初心に返って、運営しようと思っている。参加できる人数は100人以下になると思うが、チャーターを仕立てず、 通常の定期便を工夫し、出来る範囲で良いと考えている。すなわち、この島の身の丈に合った規模でやろうと思う。

それなら、ローカル航空会社スター・マリアナスの小型カーゴ便を10回ほど往復(グアム〜ロタ間)させると自転車を運ぶことが可能になる。 その結果、ツアー代金(バイク搬送費含む)は格段に 安くなるだろうし、ロタでの滞在時間もフレキシブルになり、ダイビングや島内観光も楽しんでもらうことができる。

また、これまでのようにグアムとサイパンからのも外人選手が参加もできるようにしたいと考えている。 近年、グアム・サイパンの ローカル選手でさえ、ロタへ自転車が運べない状況にある。

【最後に】

選手の皆さんが帰国した日の夜、明かりのないジャングルへ出向き、夜空の星を観察に行った。

明かりのない場所で見るロタの星空は 素晴らしい。心臓がドキッとするくらいだ。一つひとつの輝きが大きすぎて 星座がよく分からない。星雲までもはっきりと判る。

流れ星を3つ見た。その内のひとつは滞空時間が3秒ほどと長く、オレンジ色の長い尾を持った大きいもので、皆、大興奮だった。 おそらく隕石だ。特に、ロタ初来島の、星座好きの清本(ネオシステム社長)さんは、大興奮だった。 選手の皆さんも、来年はロタブルーだけでなく、星空も満喫して下さい。

【レポート・フォト】
【Special Thanks】

MVA / Rota Resort & Country Club / SIRENA / Mark Michael / RUBIN / Blue Palms / Aqua Gift Shop/ Bay Breeze Restaurant & Bar / JSBM / TRI-SPORTS / PAGE ONE / System Clinic

写真:小野口健太, 舘岡正俊, RUBIN, Blue Palms