イベント報告
JSBM Cup 第1回多摩川源流トレイルラン
JSBM Cup 1st Tamagawa Genryu Trail Run
2009年9月27日 (晴れ)
■KFC徒然

この大会を立ち上げることになった経緯は東部森林公園キャンプ場「ほうれん坊」 との出会いだった。

【ある出会い】

我々は7月26日に小菅村に隣接する奥多摩周遊道路で 「第1回東京ヒルクライムOKUTAMAステージ」という イベントを開催した。

このイベントに参加する選手用の駐車場を小菅村内で探していた時のこと、ほうれん坊の前を通 った時に、古いテニスコートが駐車場になっているのが目に入った。飛び入りで駐車場を貸してもら えないかと尋ねたら、快く承諾してもらった。

そして、26日にOKUTAMAステージ大会が終わった直後、ほうれん坊の清水さんから小菅村にも 活気のあるスポーツイベントができないだろうかと相談を受けた。小菅村は人口が800人ほどの過疎の村。 いわゆる、村興しとしてのスポーツイベントという意味だ。運営する大会の数はこれ以上増やしたくなかった のだが、駐車場を快く貸してもらったお礼の意味でお手伝いすることにした。

【山と水と空気の小菅村】

ここ小菅村は、周囲の山々の自然は豊かだし、水(小菅川)も綺麗だし、トレランのイベントならできそ うだと感じた。それに標高600mほどあるため、空気が爽やかで美味く感じる。

しかし、村内の道路には交 通量もなく、人の気配をあまり感じることができなかったので、イベントに必要なボランティなどのマンパワ ー不足が心配だった。しかし、最終的にこの部分は西東京市役所トレランクラブの助っ人を得ることができた。

コース作り、募集、運営等々の企画運営コーディネートに関しては我々KFCでやることができるが、ボランティ などのマンパワーに関しては、やはり地元の協力が必要だ。我々の地元青梅ならマンパワーも充分に手当てできるの だが・・・、小菅村では勝手が分からない。

具体的な準備作業の進め方については東部森林公園キャンプ場ほうれん坊の経営母体である「小菅村エコセラピー 研究会」の会長小島さんと進めていくことになった。因みに、最初に相談を受けた清水さんは副会長だ。

【善は急げ!】

最初の打ち合わせで、小島さんの要望は今年中に開催したいということだった。「善は急げ!」ということだ。そんな事情 で、開催日9月27日(日)ありきで準備に入った。通常、準備期間は6ヶ月を要するが、僅か2ヶ月しかない計算にな る。

今年は充分な参加者を集めることよりも、先ずはこの村でトレランというスポーツイベントを立ち上げて、新しい風 を吹かせようとされたのであろう。この村では過去にマラソンなどの広範囲な施設を使うスポーツイベントは開催された ことがないと言う。

ここ小菅村にしかない手付かずの山や川の自然を村外の人(参加者)に直に触れさせることをテーマにコースを作れ ば、参加者に喜んでもらうことができる。且つ、小菅村のイメージアップとなり、村興しにもつながる直感した。直ち に、コース作りに着手した。今あるハイキングコースをつなぎ合せてコースを作ることにした。

【小菅村の奇跡ーーブナとミズナラの森】

小菅村の周囲の山々の多くは、明治34年(1901年)に東京都が買収し、それ以降、東京都によって水道水源林と して厳しく保全管理されている。すなわち、100年以上の長きに亘って人の手が入らず自然のままに保たれている貴重 な山ということになる。

そのため、松姫峠辺りにはブナやミズナラなど広葉樹の生い茂った森が広がっている。さながらブナの原生林で有名 な東北の世界遺産「白神山地」の縮小版だ。

首都圏の近くにこれほどの自然が残っているのは奇跡に 近いと言われているそうだ。

【巨樹の森】

さらに奥(西方)に進むと、樹齢数百年は優にありそうなブナの巨木が林立している巨樹の森がある。白く立ち枯れた 巨木も見られる。倒木もある。それら全ては土に帰るまで自然のままにしてある。保全林であるため切ったり、取り除い たりして、人の手を加えることができないのだ。

どことなくスピルバーグの映画「ジェラシックパーク」のような雰囲気 を醸し出している森だ。森の奥から恐竜が出てきそうな気配が・・・・(もちろん、そんなことは決してないのでご安心 を)。

中でも、特に圧巻なのはトチの巨木だ。あの屋久島の縄文杉にも引けをとらない幹の太さだ。正確な樹齢は知らな いが千年くらいは経っているのでは・・・。

【湧水とワサビ田】

巨樹の森を過ぎて、下りに差し掛かると、樹木の間から微かに水の音が聞こえてくる。水源林の山腹から湧き出ている 水の音だ。これぞ、正に多摩川の源流水だ。

小菅村では昔からこの湧水を利用してワサビがたくさん栽培されている。湧 水を源とする山沢川の清流に沿って、1km以上もワサビ田の棚田が続いている。2年前の台風による土砂崩れで相当な ダメージを受けているが、それでも充分に素晴しいワサビ田だ。

都会の人にとっては、滅多に目にすることのない貴重な 水の光景だ。そして、最後の締めはイワナやヤマメが生息する小菅川の清流沿いに造られている遊歩道だ。

【巨樹と水のコース】

広葉樹の森、巨樹の森、湧水、ワサビ田、清流を組み合わせることで、小菅村の誇れる自然「巨樹と水」を体験できる コースができあがった。これで参加者の皆さんを驚かせることができるだろう。

コースを作る時には、参加者の皆さんをあ っと言わせられるような、感動させられるような、何かスパイス的な要素を加味できないかとついつい考えてしまう。

このようにして完成したコースは大雑把に言うと、東部森林公園キャンプ場(標高約600m)をスタートして、鶴峠 を経由して奈良倉山(標高約1350m)まで一気に750mほど駆け上がる。

ここまで来れば松姫峠を経由して、鶴寝山 (標高約1370m)まではほとんどフラット、鶴寝山山頂からは富士山も見ることができる。そして、鶴寝山から先は東 部森林公園まではずっと下りベースとなるという設定だ。

【自然は逞しい】

コース作りで一番たいへんだったのが、東部森林公園から奈良倉山までのハイキングコースの整備だ。長い間、人がほ とんど入っていない様子で、雑草や落ち葉が積もって道が消えてしまっている部分が多くあったことだ。

この部分は雑草 を刈ったり、落ち葉を掃いたりして道を復活させた。力技を要する部分だ。因みに、この辺り一体は水源の保全林ではな い。

自然の繁殖力は逞しい。人が歩いたり、駆けたりするくらいでは自然破壊にはつながらない。年間通して、自然と濃く 接していると感じることだが、世間一般で言われているほど自然は柔ではない。その証拠に、高速道路で30分ほど都心 から離れると、東西南北どこへ行っても、山ばかりだ。

【参加者は95人】

だいたいの準備が整ったところで、8月10日に募集告知をホームページ上で開始した。開催日は9月27日だから日 数の余裕はない。それでも締切日の9月10日までに95名もの応募があった。

ありがたいことだ。95名といえば、地 元青梅で開催している 「Lafuma青梅高水山トレイルラン」も第1回大会は95名ほ どだったことを思い出す。

レース当日の朝、東部森林公園キャンプ場の広場へ100人弱の参加者が集まってきた。準備期間が短かったので参加者 をおっと思わせるほどのサプライズな参加賞は用意できなかった。ゼッケンベルトとクラッシュ・キャップ、その他諸々だ。

【スタート地点の変更】

スタートは当初予定していたキャンプ場の広場からではなく、急遽200m〜300mほど離れた林道の入口に変更し た。

原因はこの地区を管轄する上野原警察署の指示によるものだ。キャンプ場敷地から林道入口までの100mほどが車 道という理由からだ。交通量も人通りもほとんどない過疎の村の村道なのに・・・。

我々下々のものでは、お上には逆ら えない。しかし、警察官も公務員、もう少しきめ細かな仕事、そこに暮らす人々の気持ちを考慮した血の通った仕事をして欲しい ものだ。

【競技開始】

競技は予定通り10:00amにスタートした。トップ選手は何と47分後には鶴峠を通過した。我々の予想タイムよ り10分ほど速い。最終ランナーは1時間34分後に辿り着いた。それでも我々の予想タイムより15分ほど速い。参加 者のレベルは予想より高いと感じた。

続く松姫峠へは11:17にトップ選手が到着。最終通過ランナーでも12:26だ。ここまで来れば、後はちょっと上 りはあるがほとんど下りベースでゴールまで行けるルンルンコースだ。皆速い。

最初にゴールに飛び込んできたのは井上元道選手(2:09:56)、その後、次々と多くの選手がゴールしてきた。 2位は江島良選手(2:12:25)、3位は山内健一選手(2:21:11)。女子優勝は鶴見有子選手(2:51: 29)、2位は森口さつき選手(2:57:58)、3位は蠣崎まな美選手(3:03:34)。

リザルトはこちら

鶴峠でリタイヤした1人を除いて選手全員が完走した。また、心配していた怪我人の発生もなかった。反省点は多々 あるが、事故や怪我人がなく、混乱もなく開催ができたことはよかった。また、小菅村の誇る巨樹と水のコースは、予 想通り、皆さんに好評だった。我々としても責任が果たせてヤレヤレだ。

【アットホームなもてなし】

山を30kmも走ったらお腹が空いているだろうと、ゴール地点に美味しそうなおにぎりやフルーツなどが用意された。 ほうれん坊の小島さんと清水さんの歓迎の気持ちのこもったアットホームなもてなしだ。皆さん美味しそうに食べていた。

第1回大会ということに加え、マンパワーの少ない小菅村での初ランニングイベントということで、行き届かぬ所も あったが、 1人の怪我人もだすことがなく終えることができた。

これも偏(ひとえ)にルールを守って参加して下さった皆さんの お陰、 ありがとうございました。

では、皆さん、来年も初秋の小菅村でお会いしましょう。

【Special Thanks】

小菅村、西東京市役所トレランクラブ、JSBM、佐藤スポーツ

写真:小野口健太、浅見俊行